船内レストランにパンスター社のポリシーを見た
18時30分、船内レストラン「ムグンファ」のオープンを知らせる放送が流れました。ムグンファでは夕食と翌日の朝食がカフェテリア方式、いわゆるバイキング料理が供されます。
不覚にも部屋でゆっくりしかけた私たちがレストランに着いてみたら、料理を選ぶお客さんたちのちょっとした行列になってました。
私たちは操舵室見学イベントがあったり、面白いネタを見つけようと忙しく船内を歩き回ったりで乗船後は結構忙しくしていました。他の乗客の皆さんは船旅を楽しむべく、昼寝をしたり、ぼんやり景色を眺めたり、仲間とおしゃべりを楽しんだり、とゆったり時間を過ごしてリフレッシュされたのでしょう。久しぶりにほぼ全員参加となるイベントに戦闘意欲満々。「まだかまだか」と積極的なのです。
食欲も旺盛なご様子で、皿いっぱいに料理を載せてテーブルへ。人気料理はあっという間に空になりますが、調理室からスタッフが出てきて手際よく料理が補充されます。全然慌てることはないんですが、半ば無為徒食と化した人たちの目線は鋭い。
大阪出発便では、先にテーブルに着いて食事を始めたのは韓国人が多かった。彼らにとっては今日は復路。往路で学習したのでしょう、早めにレストランに来て食事を楽しんでいます。逆に釜山出発便では日本人が先にテーブルに着く傾向に。
夕食時の営業時間は19時半までの1時間だけ。早く来た人はゆっくり会話を楽しみながら食事できますが、遅れて来た人は終了時間に急かされるような感じになります。この旅日記を読まれた方は、せっかくなんで大阪発便でも早めにレストランへどうぞ。
さて、私も周りの戦闘モードに影響されて、お皿にたっぷり盛ってきてしまいました。
上は大阪出発便の夕食。料理の品数が多すぎて目移りしてしまった。お代わりしてもとてもすべてお皿に載せきれません。キムチはとにかく色んな種類が用意されていました。
下は釜山出発便の夕食。大阪行きというお楽しみなのか、きつねうどんもありました。
個人的に気に入ったのが蟹のキムチ。蟹身が生の食感なんですね。一瞬、衛生的に大丈夫なのかな?と心配したのですが、身の味が濃くてねっとりとした食感に感激。
前日の夕食に釜山の焼肉店で食事をして、そのときに出汁がきいて美味しかったのが渡り蟹のミニ鍋。韓国味付けの渡り蟹、ちょっと好きになりそうな予感。
パンスタードリームの船内レストランのサービス、良いと思います。本当によく考えられているなと感じました。
顎付き足付きで招待されたらそりゃええこと言うわ、と冷やかしをおっしゃる方もいるかもしれませんが、私が良いとしたのはちゃんと理由があります。
1番目の理由。まず値段が安い。レストラン「ムグンファ」のバイキングを前日までに申し込むと、夕朝2食が1,500円で食べられます。高級料理こそ並びませんが、加工食品ではないお総菜もいくつか出てきました。
徹底した節約旅行の人はともかく、安く手軽に食事を済ましたいとお考えなら食事券を購入しましょう。乗船予約と同時に。乗船当日にフェリーターミナル窓口で購入すると1,800円、船内で支払うと2,100円します。ただし、せっかくの海外旅行なので特別に美味しいものを食べたい、とお望みの方には向きません。1食750円のバイキングに上質なレストラン料理を期待するのは無茶です。
2番目は食事のコースが自由に選べること。フェリーゾーン利用の乗客も上等船室(クルーズゾーン)向けの夕食「クルーズディナー」と朝食(5,500円)が楽しめます。こちらは実際に食べてないので料理の内容は分かりませんが、乗客の希望に合わせてコースを選択できるようにしている、そこがいいですね。
5,500円も出せないけどバイキングもなあ、とお感じならデパ地下でちょっといいお弁当を買って持ち込んではどうでしょう?港に来る途中で、梅田か難波のデパートに寄って。問題は自室以外で落ち着いて食べられる場所がないことかな?船内通路の談話コーナーは食事をするには落ち着かない。屋上の「カフェ夢」は出港直後の時間帯を除いて持ち込み不可。おやつタイムを楽しんだ「夢テラス」は、煙突のすぐ近くで振動と騒音がひどい。お茶を飲んだり騒いだりするにはいいけど、ご飯を食べるには、ね。長距離フェリーによくあるプロムナード(大きな窓の側に休憩用のテーブルとイスが置いてある広めの通路)があれば最適なんですが。それからフェリーゾーンの各船室に冷蔵庫はありませんので、衛生面にはご注意を。
話が脱線しましたが、3番目の理由です。それはスタッフの働きを含めて、食事をする雰囲気が整えられていること。レストランの床はカーペット敷き。丸い大きなテーブルには白布のテーブルクロスが掛けられ、大きなグラスにミネラルウォーターが用意されていました。清掃の効率を考えたら、床もテーブルクロスもビニール樹脂のものを使いたいところでしょう。給水器を用意してセルフサービスにすれば人手も少なくて済むはず。
パンスタードリームでは人件費節約の目的もあるのでしょう、甲板員だけでなく客室担当も韓国人以外のクルーが乗っていました。レストランでは韓国人女性に混じってフィリピン出身?と見受けられた男女のホールスタッフもサービスにあたります。空いたお皿を下げたり、ミネラルウォーターのお代わりに応じたり。一度に多くの客が食べ始めて撤収するので忙しい作業だと思います。ややもすればオペレーションが破綻して疲れ顔での対応に陥りがちですが、彼女たちは接客のプロとして誇りを持って働いているように感じました。 船内食堂ではなく船上のレストランという印象。翌日の朝食を食べ終えたとき、ちょっといい大きなホテルの朝食会場にいる感覚になりました。
このように彼女たちの丁寧なサービスに接して、コストは下げてもお客を歓待する気持ちは省力化しないという船会社の営業姿勢を見たような気分になりました。そういう意味で心から満足した私ですが、このとき実はある個人的事情で落ち着かない状態だったのです。
―― 瀬戸大橋を見たい。
食事しながら窓の外をちらちら窺ってたのですが、瀬戸大橋の下を通過した様子はない。まだチャンスはある。
夕暮れの瀬戸大橋を往く
食事を終えて急ぎ足で屋上デッキへ上がると、ちょうど船が橋に差しかかったところでした!
19時40分。今日は夏至の前日。陽が落ちて夜のとばりが降りて来るまでの、印象的な写真が撮れるトワイライト時間に通過するとは!それはラッキーなんだけど曇り空が悔やまれる!
パンスタードリームのすぐ横に貨物船が併走しています。目測で200mくらい?出航してから4時間、海の広さに目が慣れてきた頃合い。本当に手が届きそうな感覚さえする。
右に見える陸地は与島。西行き航路は北備讃瀬戸大橋の下をくぐります。ゆっくり迫ってくる橋を見てたら、さっきの貨物船がじわじわとパンスタードリームの方へ寄ってくる。
えっ?ええっ??近すぎだろ?(゜o゜;
消えた!?
もしや… んなことはないだろうけど。急いで左舷側に出てみると、
南北2つの備讃瀬戸大橋のケーブルをつなぐアンカーブロックと、その巨大な構造物の足場にされた三つ子島が見えました。奥には番の州コンビナートの灯りがまばゆく輝いています。
いや、それよりさっきの貨物船は!?
いた!斜め前を悠然と走ってる。パンスタードリームは貨物船の航跡を斜行する感じに。私たちと同じように右舷側から走ってきた2~3人から「おおーっ」と驚嘆の声が。感想を話す間もなく、目は巨大な吊り橋に奪われて仰ぎ見る体勢に。
おおーっ!
今回の船旅では初めてデッキの上でくぐる巨大橋。パンスタードリームは上海航路の船より背が高いのかな?いつもより迫力を感じました。気のせいかな?
実は船に乗って瀬戸大橋を西から眺めるときは、四国側の景色より本州側の方が美しく見えます。再び右舷側に移動。
トラス橋の向こうに、斜張橋形式の岩黒島橋と櫃石島橋が続いています。でももう暗くなって遠くが見えない。
橋がライトアップされてたら、きれいな明かりの架橋が見えるのに。観光的には残念なのですが、漁業への影響や島民への配慮として、光害を防ぐべくめったに点灯されないそうです。
それでも堪能しました。遠ざかる瀬戸大橋をしばし眺めます。
船内ショー
30分ほどデッキで巨大人工建造物ショーを見物した後、今度はロビーに降りて船内ショー「イベント」を楽しみます。忙しい(^^;)
舞台は船内レストラン「ムグンファ」の横のステージ。テーブルにはドリンクとおつまみのメニューが。食後のひとときにどうぞ、ということでしょう。スペース的にも収益機会的にも場所を有効利用してます。
レセプション担当の韓国人女性がステージに立ちました。韓国語と日本語で司会でショーが始まりました。この人、レストランのホールサービスも担当してたな。
プログラム最初に登場したのは、「カフェ夢」で遭遇したチェリストのお姉さん。ウクライナ出身だとか。乗船時のロビー演奏、カフェ夢、船内ショーと3回目の演奏。もしかしたら他の上等船室向けの会場でも演奏しているかもしれません。
ここでの演奏は2曲。釜山行きクルーズにちなんで『釜山港へ帰れ』を情感たっぷりに演奏。なんか、チェロの音色と演歌風の曲調ってもの凄くマッチしますね。演奏後とりわけ拍手が大きかったのは、有名曲だという理由だけじゃないはず。
次いでカラオケ選手権。乗客からエントリーを募って3組が熱唱。韓国人の若い女性3人グループが宴会の余興のようなパフォーマンスを披露して優勝。優勝賞品のデラックススイートへのアップグレード券を勝ち取ると、大喜びで階段を上ってクルーズゾーンの階へと消えていきました。
次に登場したのは、乗船時にタラップを上がったところで足下への注意を促していたお兄さん。
マジックショーです。本職でないのはすぐに気付きましたが、お客を楽しませるパフォーマンスについつい見入ってしまいます。人材資源も有効活用。きっと乗客が見てないところで一人何役もこなしてるのでしょう。
船内ショーは大盛り上がり、という風ではなかったけど、50分近いショーを終えてお腹いっぱいな気持ちになりました。釜山からの帰路はチェロ演奏と船員?による玄人はだしの歌謡ショーとマジックショー。何度も見ると飽きるのかな?乗客人数に比べて観客が少ない理由も分かりました。ま、でも一度は参加して楽しんだ方がいいと思いますよ。
船内風呂でサウナ
さて、お腹もこなれたしお風呂に行くか!
飛行機、鉄道、バス。世の中にはいろんな乗り物がありますが、湯船をそのまま載せている交通機関は船だけ。クルーズ客船のジャグジーバスを除くと、たっぷりのお湯につかれるのは日本の国内フェリーと日本発着の外国航路くらいでしょう。
部屋にシャワーはありますが共用でも大きな風呂の方が気持ちいい。部屋からバスタオルを持ち出して大浴場へ向かいました。
写真は乗船直後に船内探検をしたときに撮影したもの。ご覧のように、大浴場は日本語でも英語でも「サウナ」と表記されています。厳密に言うとお風呂とサウナは別物。翻訳の都合なのかな?と思ったら、湯船とは別に本当に蒸し風呂サウナがありました。サウナがあるフェリーって珍しいんじゃないかな?国際定期航路では初めての経験です。
他のフェリー同様にタオルは用意されていません。が、掲示を読むと販売ではなくデポジット100円で貸してくれるそうです。ずいぶんと良心的なシステム。利用時間は出港後すぐの15時から23時まで。朝は5時から9時まで。夜中以外は入ろうと思ったときいつでも入れる。いいですね。
湯船につかってサウナで汗を流してシャワーで身体を洗って。超サッパリ気持ちいい!瀬戸内の景色を眺めてご飯を食べてショーを見て。まるで健康ランドから戻ってきた気分です。
さあ、「カフェ夢」で風呂上がりの一杯と行きましょうか!!
来島海峡大橋
カフェ夢には2階Aデッキから螺旋階段を登って直接入ることもできるのですが、食事前に立ち寄ったように屋上デッキから入ろうと船外に通じる階段を上がったところ、偶然にも来島海峡大橋をくぐるところでした!
今日は何だか運がいいぞ?21時59分。急いでカメラを取り出したら、あっと言う間に橋の下を通過。
来島海峡大橋は何度かフェリーでくぐった経験があるんですが、長距離フェリーに乗ると通過時間はいつも夜。今回も夜遅いし景色はあまり見られなさそう。そう思ってとくに見る予定はしてなかっんだけども。橋を通過して夜目に慣れてくると、島影が闇の中に浮かび上がってきます。
パンスタードリームは来島海峡第二大橋の下を、来島海峡の中でも中水道と呼ばれる馬島と武志島に挟まれた海峡を通過しました。
ここも例によって「来島海峡航路」という特別な航行ルールが定められた海域。西行き(海峡部では北行き)の船が潮流と同じ方向に進む場合は右側通行で中水道を、潮流が船の進行方向と逆に流れているときは左側通行として馬島を挟んで反対側の西水道を航行することになっています。Wikipediaの記事によると、こういう切替方式を採っている海域は世界でも唯一なんだそうです。
ということで今の時間、潮流は東の燧灘(ひうちなだ)から西の斎灘(いつきなだ)へ流れてることになります。
今日は思わず大橋を3つ見られました。関門橋を通過するのは午前4時半頃。さすがに寝てます。
一日の最後は「カフェ夢」で
風呂上がりのサッパリ感が潮風に負けないうちに「カフェ夢」へ。
先客は1組だけでした。
メニューの価格はウォン建てのみ。カフェのスタッフに「支払いは日本円払いでもいい?」と聞くとOKという返事。レートは1,000ウォンが100円でした。
ビールDセットの「アサヒ生ビール1,700cc+おつまみ」(20,000ウォン)を注文。真ん中の辛味噌がついてくるのが韓国風かな?
いや~、それにしても今日は忙しかったなあ。本当にお疲れさまでした、と乾杯。
ふつう、船旅というとのんびりしすぎて時間を持てあましてしまうイメージを持つもの。ふだん読みそうもないジャンルの本を持ち込んだり、乗ったら結局読まずに2等船室のカーペット部屋でゴロゴロして惰眠をむさぼったり。同行者を旅行に誘うとき「乗船レポートの取材だから」とは伝えていたけど、彼が持ってただろう船旅のイメージを微妙に変な方向に歪めてしまったかも。忙しいといってもすぐに用事が済むわけじゃない。出港イベントに30分、操舵室見学に40分、おやつタイムに40分、瀬戸大橋に15分と。船のスピードが遅い分だけ一つのイベントにかかる時間も長かった。部屋でのんびり背伸びする暇もなかった。まあでも実際にクルーズ客船に乗っても、初めはデッキチェアで読書なんてする暇はなく、イベントスケジュールを忙しくこなしていくわけで。とにかく付き合ってくれてありがとう、です。
注文したビールセットのおつまみ、ビールの量に比べておつまみの量が多い。ビールを追加注文しやすいように、ということでしょうがお腹も満たされてたくさん飲めません。
スタッフに「何時にクローズ?」と尋ねると、とっさに時計を見て30分延長してくれた気配。それはありがたいんだけど、カフェの後方が折り戸型のサッシになっていて、エンジンの振動が伝わってガタガタと大きな音を出して揺れ続けています。長居するほど音が気になってくる。
ビニール袋を貰って、残ったおつまみを詰めて部屋へ戻ることに。
帰りは2階Aデッキから退店。
そろそろ寝ましょうか。
4人部屋の4枚のクッションマット。ぜいたくに1人が2枚使って横に並べるとこんな感じに。
私たちに指定された部屋は船の前の方。エンジン振動は感じないし、振動音もしない。波の揺れもない平和な瀬戸内海の夜。今夜はぐっすりと眠れそうです。おやすみなさい!
(つづく)
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