はにー の「韓国東海岸北上の旅 ’09夏」
その2の2 白岩温泉に辿り着くまで編

おはようございます。韓国二日目の朝が明けました。
今日は移動日。
予定としてはここ海雲台温泉(ヘウンデオンチョン)から白岩(ベガム)温泉まで、
暗くなるまでに到着すればいいだけの日。なので特に何もやることがありません。
ところでところで、昨日は炎天下を歩き回ったというのに、
夜は酔いも回ったせいもあって『ムフフ』の途中で力尽きて眠ってしまったので、
おととい仕事から帰った後に家で手短にシャワーを浴びてから新幹線に飛び乗って以来、
丸一日以上風呂に入っていない、という、とってもババッチィ状況。

ところで海雲台温泉街にはいくつもオンチョンモギョクタン(温泉沐浴湯=温泉銭湯)が点在しています。
また有名温泉ホテルの温泉に立ち寄り入浴することもできます。
そこでせっかく温泉街に宿泊してるんだから、ということで、温泉銭湯に朝風呂に行くことに。
受付のアボジには、
「ちぇっくあうと あにょ 、おんちょんもぎょくたん かよ。(チェックアウトじゃなくて、温泉銭湯に行ってきます。)」
と宣言してルームキーを預け、海雲台温泉街に。
そして今回は、宿から程近い所にあった『ゴリョオンチョン』に入ることに。
ちなみに『ゴリョ』は漢字で書くと多分『高麗』なので、漢字で書くと『高麗温泉』だと思われ。

さて、海雲台温泉は韓国有数の温泉街。
泉質は、『弱アルカリ性塩化ナトリウム型食塩泉』。しょっぱいです。
日本式にいうと『ナトリウム・カルシウム塩化物泉』となります。
温泉街全体には源泉井戸が13本もあり、2000t/日もの湧出量があって、
温泉の供給を受けている施設は30ヶ所にも上るそうな。
ただし温泉は自噴ではないので、源泉から湯気がシュワシュワ・モクモク、といった光景は見られません。

ちなみに海雲台温泉の歴史はというと、
新羅の女王様が天然痘にかかり湯治に来たら治った、という伝説があるくらい、古くから温泉があったことは確か。
だけどヘウンデの住民にとっては、
その伝説にあやかって皮膚病患者が朝鮮全土からやって来るので村のイメージダウンがとっても嫌だったり、
高官達が温泉リゾートのためにやって来るんでその接待がとっても嫌だったり、
なぜか倭寇(海賊)達の侵犯がとっても激しかったり、
そんなこんなの理由により、温泉は迷惑物件以外の何物でもない代物。
そういうことで温泉はいつの頃か閉鎖され、かなりの長い間(数百年間?)放置されていたみたい。
そして日本が朝鮮に進出していった日清戦争後の1897年、
日本の医師が温泉を再発掘、療養用の浴場を建てたのが開発の始まり。
そして1994年に観光特区に指定されて大規模リゾートとして再開発され、今日に至っているそうな。


↑GWに湯巡りした釜山と慶州の温泉

ところでこれまでの湯巡りで気付いた韓国と日本の温泉(銭湯)の大きな違いなんだけど、
(1)受付(番台)のアボジ(アジュンマの時もあるけど)とは別に、
(2)脱衣場の入り口の下足場に大体靴磨きのアボジがいます。
(3)そして脱衣場には必ず理髪店が併設されていて、床屋専門のアボジがいます。
これだと髪切ってもらった後に自分で洗髪すればいいんで、理にかなってる。
(最近では日本のスーパー銭湯にもこのシステムを取り入れている所多いですよね。)
(4)そしてこの他に、脱衣場で風呂上りの一杯のジュースとかお菓子とかを売っているアボジと、
(5)浴室内でアカスリ(後述)をしているアボジと、
5人ものアボジが働いていることがあります。
(もちろん規模によっては掛け持ちしていることもあるみたいだけど。)

そしてそしてなんと言っても、『手ぶらでOK』ということ。
もちろん日本でも、ボディソープ&シャンプーが置いてあったり、タオル類はレンタル可とか、番台で現地調達、
というのはできるんで、割り増し料金や新規購入なしで、ということでなんだけど。
で、まずは石鹸。これは洗い場に普通に置いてあります。
そしてタオル。
浴室入り口に身体を洗う(擦る)ための、あのピンク色で薄くてメッシュ状の垢擦りタオルが置いてあります。
また上がる時用に、身体拭き用のタオル(ただしバスタオルでなく普通サイズで厚手の物)も
浴室入り口に用意されています。(置いてない所もあります。)

ということで、手ぶらでOK、タオルも持ってかなくてもいい、ということなんだけど、
それはそれ、じゃあ『前』は何でどうやって隠すのか、というと、答えは簡単。
「隠しません」。
女湯の方は残念ながら(当然)覗いたことないので解りませんが、
男湯の方はみんなスッポンポンで、惜しげもなく『ご立派な息子さん』を見せ付けられます。
僕はというと、最初行った頃はそれでもタオル持ち込んで隠してたんだけど、
それだとイルボンサラム(日本人)だということが一発でバレちゃうんで、最近では
「郷に入れば郷に従え」
手ブラのお陰で、僕も『貧相な愚息』を隠さずにブラブラさせておりますです。

浴室に入ると、もちろん湯船がたくさんあるんですが、でも韓国人達はあまり湯船に浸かってません。
どうも洗い場でメッシュのアカスリタオルで身体をゴシゴシ擦ってる方が好きみたい。
韓国ではシャワーはあるけど湯船はない、という家庭も多くて、
またあっても普段はシャワーで済ませてしまう、ということも多くて、
そこで週一回位のペースで銭湯にやって来ては、アカスリをゴシゴシ、というのが一般的らしいです。

ということで、浴室の一角には必ずアカスリベッドが置いてあって、安価にアカスリをやってもらえます。
料金は15000~20000W(1192~1589円)位かな。
ただし日本のスーパー銭湯ではちゃんとしたアカスリルームがあるのが普通だけど、
韓国ではベッドが衝立で仕切られていることもあるけど、アッパッパーなことも。
そして、日本ではアカスリ中は『アソコ』の上にタオルを置いて隠してくれるけど、
韓国では上記の流れから、もちろん『そのまんま』です。ハイ。

そしてそして、『全自動アカスリ機』が設置してある銭湯もあります。
(今回行った温泉達には置いてなかったけど。これはGWの温泉巡りの時の写真。)
これはどのようなシロモノなのかというと、
メッシュタオルを巻いたタワシ部を、スイッチONで回転させる、というだけのシンプルな機械。
使い方も簡単。
使用者はスイッチを入れ、回転しているタワシ部に身体の擦りたい部分を押し当てます。ただそれだけ。
これの前に仁王立ちして背中を擦っていたり、Y字開脚して内股を擦っているオッサンがよくいるんだけど、
モロ写っちゃうんで、とてもじゃないけど使用中の姿を写真に収めるわけにはいきません。

その他として、浴室の一角には必ず寝転びスペースがあります。
サッパリした後、マイナスイオンのミストが充満する浴室でゴロンと横になるってのはとってもキモチイイ~。
あと洗い場の横に、突然アサガオ(小便器)が設置されていることも。
ま、たしかに子供とか(大人もだけど)急に催したくなった時便利だけど、センスはないよなぁ。
してるところ周りから丸見えだけど、どうせ元々隠してないし。
逆に露天風呂については、存在確率はかなり少ないです。
温泉銭湯には皆無、SPA(大型温泉施設)に極たまにあるくらい。
アカスリゴシゴシの韓国人には、湯船に浸かってマッタリという露天風呂は興味がないのかなぁ。


さてさて高麗温泉(ゴリョオンチョン)ですが、番台(受付)は1階から2階の階段の途中(踊り場)にあり、
2階がヨタン(女湯)、3階がナンタン(男湯)になっています。
料金は4500W(358円)。
日本の(スーパーでない)銭湯料金が全国平均で380円位なので、
韓国の物価からいうと、銭湯の値段ってちょっと高いんでは?
値段的に週一、というのもなんだか納得できちゃう。

浴室の構造はというと、
真ん中に高温(43℃位※僕の体感温度)と低温(40℃位)の湯船があり、
一角にサウナがあって、そしてサウナ用の水風呂、アカスリコーナー、寝転びスペース。
そして壁の1.5面位を洗い場のカランが占めています。
韓国の温泉銭湯としてはこじんまりしている方じゃないかな。

僕はぬる湯好きなんで、低温の方にしばらく浸かってました。
で、ちょっとお湯を舐めてみると、食塩泉なんで確かにしょっぱい。でも塩っ辛い、というところまでではないなぁ。
そしてそして泉質の効能として、温泉成分が毛穴を塞ぎ体外に熱を逃げにくくするため、
だんだん身体中がポカポカしてきました。こいつは気持ちイー!
お風呂から上がっても、かなりの発汗作用。
扇風機でしばし身体を冷やし、汗が引いたところで服を着て宿に戻りましたとさ。

…ちなみにこの海雲台温泉・高麗温泉湯のレポ、
YAHOO!JAPANでもGoogleでも検索HITなし。
現在日本で唯一の物であります。
フェリーサイトの旅行記なのにねぇ…。


銭湯を出て、途中コンビニに寄って朝飯のおにぎりを買い、宿の部屋に戻ってきました。
(韓国でもおにぎり売ってます。キムチ入りとかピピンバおにぎりとか、日本の物とはちょっと違うけど。)
そしてテレビを見ながらの朝ごはんです。

韓国のテレビもすっごい多チャンネル化してて、どんな安宿に泊っても50チャンネル位は平気で映ります。
だけどもちろん韓国語でしゃべってるんで、詳しい内容はほとんどわかりません。
言葉の壁が気にならないのは、『大人のムフフ』なチャンネルくらい。

ただ日本のテレビドラマや映画がハングル字幕でよくやっていて、結構な確率で見ることができます。
これまで見たドラマは、『ファイティングガール』とか『Dr.コト-』とか。
今回は、オセロ中島と寺島しのぶが出てたドラマ(帰国後調べると『おとなの夏休み』と判明)とか、
オダギリジョー主演の題名不明の映画(もしかすると彼が主演の韓国映画『悲夢』かも)をやってたな。

あと日本のいろんなアニメが、韓国語吹き替えで放映されています。
この時はちょうど『ONE PIECE』をやっていました。
看板がハングルに書き直されていたり、強調のためのハングルスーパーが入っていたり、
声だけでなく画の方にも手が加えられているみたい。
これまで見たアニメは、『ドラえもん』とか『しんちゃん』とか『犬夜叉』とか『ケロロ』とか、お馴染みの物多し。
なので韓国語セリフは何言ってるか解らなくても、画を見てれば何となくの内容は解っちゃいます。

韓国旅行中は、NHKワールド放送が日本とを結ぶ唯一といっていい情報源になるんで、
実はこいつが欲しかったんだけど、
この宿は韓国の恋人達の宿泊を前提にしている、日本人の宿泊を考慮していない宿なんで、
残念ながらチャンネルには入っていませんでした。
のりピーの続報が知りたかったのになぁ…

こうしてモーテルをチェックアウトし、
白岩温泉方面に向かう市外バスが発着するバスターミナルへ、地下鉄で向かいます。
釜山の地下鉄は3路線、総営業距離は96.0km。
路線数こそ少ないですが、なんと名古屋の地下鉄(89.1km)より長いんだぁ。
大阪(129.9km)には若干届いてないけど、まだまだ延伸予定で路線建設中。
運賃は、1区間(10kmまで)が1100W(88円)、2区間(10km超)が1300W(104円)。
また3500W(288円)の一日乗車券もあるんで、もし2区間を3回以上乗るならこっちの方がお得。
連絡バスの時も書いたけど、韓国の交通費は日本に比べてめちゃ安いなぁ。
でも僕が初めて韓国に来た2000年の時点では、
記憶が正しければ確か600W/700Wだったので、その時に比べれば約2倍に値上がり。
デフレな日本と違い、韓国のインフレはすごい。

でも韓国も日本も、所詮は同じ地下鉄、さほど違いはありません。
違いはというと、
当たり前だけど駅名表示が主としてハングル表記。(ただし漢字やアルファベット表記もあり。)
自販機での切符の買い方:1区/2区のボタンを押してからお金を投入する。
自動改札機が3本バーの回転式。
なんてこともあるけど、そんなに画期的に大したことじゃありません。些細な違い。
日本人が市内バスを利用するのはちょっとハードルが高いので、
なので地下鉄が市内を安価に楽に移動できる頼もしい足であることは確か。

という釜山(韓国)の地下鉄ですが、日本とは決定的に違う所があります。
それは『車内販売』があること。
車内販売というと、日本では新幹線や特急に乗るとやってくる、
ワゴンにお弁当やビールを載せた売り子さんを思い浮かべますけど、全然そうではなくて…

「さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。今、世間で評判の○○だよっ。
××な時、△△なことがあっても、これさえあれば大丈夫。さぁ、買った買った!」
もちろん韓国語なんで何言ってるか全然解らないけど、多分こんな感じ。
突然車両の真ん中で、地下鉄には不釣合いな大きな鞄やキャリーケースを持ったアボジやアジュンマが、
鞄から取り出した商品を掲げて見せて、大声でバナナの叩き売りのような口上を始めます。
で、その商品を気に入った乗客は、売り子を呼び止めて購入する、っていう寸法。
これが『TYPE1・叩き売りバージョン』。

そしてもう一つが、『TYPE2・押し売りバージョン』。
こちらがどんなものか、例としてチューインガム売りで説明すると、
まず売り子は何も言わず問答無用で、座っている乗客達の膝の上にガムをにポンポンと置いていきます。
そしてグルッと一周してあらかたその車両の全員にガムを配り終わったら、今度は二周目。
乗客は「ガムを買ってもいいな」と思えば代金を支払い、「いらねーよ」と思えばガムを(叩き)返す、というシステム。

こんな感じで売り子達は、隣あった車両を次から次へと、移っては商売、移っては商売、していきます。
で実際、車内でどのような物が売られてるのか、これまで僕の出くわした物はというと、
キーホルダー、おもちゃ、ガム、飴、ハンカチ、ネクタイ、ストッキング…
といった、100円ショップならぬ1000Wショップに並んでいそうな商品ばかり。かと思いきや…
「僕の書いた詩はいかがですかぁ~?」
詩人が自分の詩集を押し売りしてたり、
「右や左の旦那様ァー、憐れに思し召しならお恵みを…」
車両から車両を廻って施しを受けようとするアクティヴな物乞いさんもいたりしました。

で、今回、何が叩き売られていたかというと…
パッと見では袋に入った布状の物。
ハンカチ?ストッキング?なにやらそういう系統みたいだけど…。ネクタイではなさそう。
すると、
「2つ頂戴。」
「へい!毎度!おおきに!」
僕の目の前に座っていたトレッキング姿をした年配のご夫婦がそろってご購入。
そして二人は商品を買うや否や、袋を開けはじめました。
で、袋から出てきた物は、筒状の布。あ、日焼け防止用の腕カバーだ。
この路線、沿線にトレッキングポイントが数多くあり、
なのでこれからトレッキングに向かう乗客も数多く乗車していて、
その中の二人であるご夫婦にとっては、腕カバーはまさに本日これからの必需品。
そして売り子にとっては本日の売れ線商品というわけでして。
「ちょうどいい買い物したヮ!」
という満足げな表情を浮かべて、二人は腕カバーを仲良く装着していました。


そんなこんなで地下鉄は老圃洞(ノポドン)駅に到着。
で老圃洞駅は、釜山総合バスターミナル(BT)に直結しています。

さて、ここからしばし韓国のバス事情を。
日本だと高速BTは大都市中心駅の隣にあったりしますよね。
ところがこれだと利用者はバスに乗るまでは便利なんだけど、
バスターミナルと高速道路のインターチェンジ(IC)が遠くて、更に渋滞してたりして、
この間の移動に時間がかかってしまう、そのせいで遅延してしまう、なんてことが多々あります。
ところがこの釜山総合BTは老圃ICに隣接していて、すぐに高速に乗れる&下りたらすぐBT。
そしてBTまでのアクセスも老圃洞駅直結と、とっても便利。
これはこれで合理的な方法だなぁ。

ちなみに釜山市にはこの総合BT他にもバスターミナルがあります。
釜山は韓国全土から見ると南東部に位置していますよね。
なのでソウルをはじめ、釜山から北&北西の都市に向かうバスは、釜山市街地の北にあるこの総合BTから発着します。
そして釜山から西の都市に向かうバスは、
地下鉄沙上(サジャン)駅に直結していて甘田(カンジョン)ICに程近い、
文字通り市街地の西にある西部市外BTから発着します。
あと先程までいた海雲台にも実は規模はずっと小さいけど市外BTがあって、
釜山に程近い都市への市外バスと、東ソウル行きが発着しています。

さてさて、韓国の都市間を結ぶバスには、ややこしいことに『高速バス』/『市外バス』の2種類があります。

・高速バス:
  全走行距離の60%以上を高速道路を走行してノンストップで結ぶバス。
  鉄道の種別でいうと『特急』相当か。
  横4列シート(2+2)の『一般』と、横3列シート(2+1)の『優等』(運賃は約1.5倍)があり。
  座席指定制で、切符を買うと便と座席が指定される。
・市外バス:
  高速/一般道を経由して結ぶバス。空港リムジンバスもこのカテゴリーかな。
  座席定員制で、便と座席は指定されない。

で『市外バス』には、更に『直通バス』/『直行バス』いう種類があります。
字面からいって、どこがどう違うんだ?てな感じなんだけど、

・市外直通バス:
  目的地まで経由地なしで走る市外バス。『無停車』と書かれていることも。『急行』相当か。
・市外直行バス:
  目的地までいくつもの小さな街のBTや停留所に停車する市外バス。『準急』相当か。

運賃は『直通』/『直行』共通らしいんだけど、
所要時間については、『直通』ではバイパス道路で突っ切ってしまう街も、
『直行』ではわざわざ旧道を経由して市街地に入ったりするので、倍近く違うこともあるらしい。

ところで『市外バス』でも、全走行距離の60%以上を高速道路を走る路線もあるらしく、
そして『高速バス』と『市外バス』が並行して運行している路線や区間もあるみたい。
ということで、ノンストップの『高速バス』と、経由地なしの『市外直通バス』の違いって何?
う~ん、よーわからん!

そしてバスターミナルについてはというと、高速BTと市外BTが、
離れた場所にあったり、隣接していたり、合体していたり。都市ごとにまちまち。
もしバスターミナルが隣接や合体している場合は、両方のBTを覗いて、
高速バス>市外直通バス>市外直行バス
の順でバスで選べば、所要時間が短くてすむと思われ。

ということで、バスについての説明を長々と書きましたが、
この釜山総合BTは、かつて別々の場所にあった高速BTと市外BTが合体してできたターミナル。
向かって左側に市外バス、右側に高速バスの切符売り場の窓口がズラリと並んでいます。


さて白岩温泉への行き方なんだけど、実は’08年正月に行こうと計画したことがあって、
その時ホテルのHPの掲示板にカキコして、行き方は訊いてありました。
(結局その時はウォン高により断念。別府/由布院での年越しステイになったんだけど。)
その情報によると、まずは釜山から、
浦項(ポハン)いう都市の北にある平海(ピョンヘ)という街まで市外バスでやって来て、
そして平海から白岩温泉までは市内バスに乗り換えて来て、とのことでした。

ということで、まずは平海を目指すことに。
…したいんだけど、ここからは未知の領域。
釜山から平海まで直通のバスはあるのか?通しの切符は買えるのか?
とりあえず浦項まで行って、そこで乗り換えとか?
まず釜山→浦項の切符を買い、その後浦項→平海の切符を別に買う?
また時刻表で浦項BTのページを見ると、浦項→白岩温泉の市外バスも1日3便走っているみたい。
なので浦項まで行った後、白岩温泉行きバスに乗り換える?
様々な組み合わせの可能性が、頭の中でグルグル…。

そんなメダパニな状況で活躍したのが、昨日買った時刻表。
市外バス切符売り場のインフォメーションの窓口嬢に、時刻表の市外バス索引図のページを開き、
「なぬん べがむおんちょんへ かごしっぽよ。(私は白岩温泉へ行きたいです。)
なんでまずは、ぴょんへへ かごしっぽよ。(平海に行きたいです。)」
と平海の位置を指差しながら尋ねてみるど、
僕の不安を余所に、平海までのチケットが拍子抜けする位あっさりと発券されました。
運賃は16400W(1303円)。うーん、相変わらず安い。
そして窓口嬢は親切にもバスの発車時間を口頭で教えつつ、乗車券の裏にも書いてくれました。
次のバスは11:10。
次の次のバスは11:46。
現在時刻は11:02なので、急げば11:10にも間に合うんだけど、
急ぐ旅でもなし、11:46のバスに乗ることに。
「しびるし さーしぷゆくぷん(11:46) ばす かよ。かむさはむにだ!
(11:46のバスで行きます。ありがとう!)」

さて、釜山から平海までの所要時間はよく解らないけど、暫くの間は車上で過ごすんで、お昼を跨ぐことは確実。
なのでバスに乗り込む前にまずは腹ごしらえ。
ターミナル構内にあった食堂(シクタン)に入り、お昼ご飯を食べることに。
店の入り口では『オデン』がグツグツ煮られていて、そして店内のメニューには『ウドン』の写真がデーンと。
そこで一も二もなく、
「オデンちょせよ。そんで、ウドンもちょせよ。」
『オデン』と『ウドン』を注文。

『オデン』も『ウドン』も、たぶん日韓併合時代に上陸し、そのまま定着した物なんだろうなぁ。でも
『オデン』は『御田(おでん)』にあらず。
『ウドン』は『饂飩(うどん)』にあらず。
インドの『CURRY』≠日本の『カレー』である様に、
中国の『拉麺』≠日本の『ラーメン』である様に、
『CURRY』/『拉麺』が日本人の舌に合う様に独自の進化を遂げて『カレー』/『ラーメン』となった様に、
『オデン』も『ウドン』も既に日本人の手(舌)から離れ、韓国人の舌に合う様に独自進化を遂げた物なんでしょう。

まずは『オデン』。
たぶん昆布ダシで薄味あっさり系。
具材はこの様にハンペン?(魚の練り物)がメインで、僕の大好きな玉子や厚揚げはないみたい。
薄味が定着したのは、元々初めて持ち込まれたのが関西風の薄味の『おでん』だったからなのかな?
それとも韓国人の舌に合う様に進化して薄味に落ち着いたのか?
ともかく愛知県民は関東風濃い口の『おでん』か、または『味噌おでん』を通常食するので、
ちょっとパンチが効いてない感じ。美味しかったんだけど。

そして『ウドン』。
たぶんいりこダシで、こちらも薄味あっさり系。
麺も『稲庭うどん』みたく、若干細い感じ。
そして入ってる具は、わかめ・ハンペン・揚げ玉・ネギ、と日本と変わらないはずなのに、どこか何かが違う。
薄味なのは、これも初めて持ち込まれたのが関西風の薄味『うどん』だったからなのか?
それとも進化の結果としてなのか?
花かつおが豪快に乗った濃い口の『きしめん』や、『味噌煮込みうどん』を食する愛知県民には、
これもまた美味しかったんだけど、やっぱりちょっとインパクトに欠ける…。


腹ごしらえも完了し、バス乗り場へ。
で、乗り場のほぼ中央から写真を撮ってみました。
白い看板は市外バス、青い看板は高速バスの乗り場。
右を見ても左を見ても、見渡す限りバスがズラーッと並び、実に壮観です。
こんな光景、日本のどこのバスターミナルでもお目にかかれないでしょう。

もう一度韓国全土の市外バス路線網を見てください。津々浦々を網羅していますね。
更にこの市外バス路線網とは別に、高速バス路線網も全国隈なく走っているわけで。
ということで、韓国ではこの様に、市外/高速バス網がとてつもないレベルで張り巡らされています。
そして、乗客が多い路線なんて、なんと10分間隔で発着しています。
そしてそして、運賃がとっても安い。
日本でも鉄道に比べて安い運賃が魅力、ということで高速バス網がそれなりに発達してはいますが、
韓国のレベルとは比べ物になりません。

何故こんなにバス網が発達しているかというと、それは鉄道が使いにくいから、じゃないかな。
韓国鉄道公社(KR)の路線網は総延長約3000km。主要都市間を隈なく結んでいます。
そして個々の線路はすごく立派に整備されている感じ。
ところが線路は走っているのに、肝心の旅客列車があまり走ってない。
使い物になるのは韓国版新幹線KTXが走る京釜線と湖南線ぐらいで、
他の路線は日本のローカル線くらいのダイヤで、1時間に1本走っていたらいい方。

どうしてこんな状況なのかというと…、それは韓国のお国事情が大きく影響しているのでしょう。
今現在においても、『朝鮮戦争』は実は未だ終戦しておらず、
『韓国』と『北朝鮮』は北緯38度線を挟んで対峙している戦争状態にあり、
仮初めの休戦が永らく続いているだけで、一朝事あらば直ちに臨戦態勢へ、という状況。
ということで、全国に敷かれた鉄道網は旅客のためにあるのではなく、
兵站の一役を担う軍事施設の延長線上にあります。
列車を利用していると、ホロを被せた戦車を載せた貨物列車と遭遇したりすることが、ままあるし。
なので旅客列車よりは軍事貨物列車が優先され。
 なので旅客列車は本数ないし遅いし高いし、ということで鉄道は使いにくいんで。
  なので鉄道の代わりにバス路線網が発達。
という流れ、ではないかと思われます。
昨今世界的に問題になっている、化石燃料消費やCO2排出や排ガスなどの観点からいうと、
これどーなのよ、とも思うんだけど。

で、韓国東海岸の諸都市方面行きの市外バスが出発する乗り場にやってきました。
乗り場には既に1台のバスが停車。
フロントガラスには、『ポハン(浦項)』『ウルジン(蔚珍)』という、
ちょうど平海の南と北の都市の名前がハングルで書かれています。
(今写真を見返すと、赤字で『ムジョンチャ(無停車)』とも書かれていますね。)
「このバスでいいのかな?」
ということで、案内のアボジにチケットを見せながら、
「よぎばす、ぴょんへへかよ?(このバス平海に行きます?)」
と尋ねると、首を横に振りながら
「アニョ。」
という答え。
先程聞いた発車時間まではまだ間もあるし、この次のバスなのかな…。
そう思って乗り場で待とうとすると、
今度は別のアボジがやって来て、チケットも見ないでこのバスに乗れ、と追い立てられました。
「え、どういうこった?」
ちょっと疑問に思ったけど、
「ま、運転手にチケット見せて、このバスじゃなきゃ、また乗り換えればいいし。」
そう思い直し、言質に従い、素直にバスに乗り込みます。


で、これが乗り込んだバスの車内。(2+1)の横3列シートです。
高速バスには横4列(2+2)の『一般』と、横3列(2+1)の『優等』があるのは調べてあったんだけど、
市外バスにも横3列シート車があるんだなぁ。
で、とっさの状況でも動けるよう、運転席のすぐ真後ろの席に陣取ります。

しばらくすると、バスには
「おまんじゅうはいかがですか~。」
おまんじゅう売りのアジュンマがやって来たんで、箱入りではなく袋入りを一つ購入。
ついでに写真をパチリと撮らせてもらいました。
おまんじゅうはたこ焼き位の大きさの8個入りで、
味の方は程よい甘さのアンコ入りだったんだけど、なにぶんお昼を食べたばっかだったし、
そして早速空けた缶メッチュ(ビール)のつまみには合わんかったんで、後で食べることに。
ま、そんなこんなで、なんだかどんどん、
「これから旅に出るんだ!」
という気分が、まった~りと高まってきます。(もうとっくに旅行中なんだけど。)

そして定刻8分前の11:38になると、運転手がバスに乗り込んできて…
乗客のチケットなんぞ全く確認しないまま、間髪いれずにエンジンを掛けてバスを急発進させました!
んで、
「皆様、本日はポハン行き市外バスのご利用、ありがとうございます…。」
などと思われるアナウンスまでも入れ始めちゃう始末。
「えっ?!8分も前にフライング発進? えっ?!チケットの確認は?」
あまりの急展開にちょっとPANIC!
慌てて、運転しつつアナウンスしている運転手に、すぐ真後ろから
「よぼせよーっ!よぎばす、ぴょんへへかよっ?!」
と尋ねると、運ちゃんはアナウンスを中断し、
「アニョ!アニョッ!!」
バスは100m程走った所で急停車。
なんでお前みたいな奴が乗り込んでるんだという剣幕で、叩き出される様にバスから降ろされました。


こうして鞄とを抱え、缶メッチュを握り締め、
大型バスがひっきりなしに通るターミナルの道路部分を100mほど、
ちょっと怖い思いをしながら歩いて戻ってくると、
このわずかな時間に、乗り場にはもう次のバスがスタンバイしてました。
今度のバスはフロントガラスに、平海の南の都市である『ポハン』の文字はなかったけど、
『ウルジン(蔚珍)』『トンヘ(東海)』『カンルン(江陵)』といった北の都市達の文字が並んでいます。
で、今回は念入りに、先程「バスに乗れ」と追い立てたのとは別のアボジにチケットを見せながら
「よぎばす、ぴょんへへかよ?」
と尋ねると、今度に関しては、
「ネー。」
との答え。なので再びバスに乗車します。

今回のバスは(2+2)の横4列シート車。(『直通』は3列で、『直行』は4列なのか?)
で、前回と同様に運転席のすぐ真後ろの席に陣取ると、
程なく運転手が乗車してきて、前回と違い、ちゃんと乗客のチケットを確認し始め…
そして僕の番になり、チケットを見せながら、再び×2
「よぎばす、ぴょんへへかよ?」
すると今回に関しては、
「うんうん。」
運転手は2度頷きました。
あー、やれやれ。今度という今度は大丈夫そう。
そしてバスは定刻の11:46、何事もなく無事に出発!


バスはすぐに高速に乗り、かなりのスピードでブッ飛ばします。
韓国の道路は右側通行。
初めて韓国に来た時は、かなりの違和感ですごく怖い感覚だったけど、
何度も来ている内に、さすがにそれは慣れちゃったなぁ。
でも国際免許取って、自分でレンタカー借りて運転するなんてのは、
絶対無意識で左車線走っちゃって、対向車と正面衝突しちゃう可能性大だから無理だろーなー…
…なんてことを、2本目の缶メッチュを片手にボーっと考えていると、
程なくしてバスは慶州ICを下り、最初の経由地・慶州へ。

釜山→慶州の距離は80km程。高速道路経由だったので、所要時間はわずか1時間弱。
この区間を、市外バス:20本/日 & 高速バス:30~40分間隔、でひっきりなしに走っています。
運賃は、市外バス・高速優等バス:4000W(318円)、高速一般バス:3900W(310円)。

GW乗車のムグンファ号

ちなみにGWの釜山→慶州の移動には鉄道を利用しました。
0:15~1:30というランダムな間隔で、合わせて16本/日の運行。
そして所要時間は、セマウル号:最速1:41、ムグンファ号:最速1:49 と倍近く掛かり、断然遅い。
そしてそして運賃はというと、(※週末運賃。平日運賃は5%安。)
セマウル号一般室:10000W(795円)、ムグンファ号:6800W(541円)。
(セマウル号特室(グリーン車相当)は15%増。)

ということで、セマウル号(一般室・週末)と高速一般バスとの運賃比は、なんと2.5倍以上。
本当に韓国の鉄道ローカル路線は、本数ないし遅いし高い。
では、使いにくい…のかというと、韓国人にはともかく、日本人には実はそうでもないです。
バスは本数あるし速いし安い、んだけど、
韓国語が使えなくて土地勘のない日本人が利用するのは、乗り降りの面でちょっと試練。(後述)
しかし鉄道は、時刻表にダイヤが載ってて正確で、そして駅到着時には車内アナウンスが入るんで、
乗り降りに不便さは感じません。バス旅よりは全然楽。
車内設備(ハード)的にはトイレもあるし、ダイヤや車内アナウンスなどのソフト面を考慮すれば、
差額分だけ格段に快適!というわけでもないけど、差分はある程度は埋まるかな。


さて、万世一系な天皇家が続く日本とは違い、朝鮮は何度も王朝交代をしてきました。
そして日本でいうと飛鳥~奈良~平安時代に当たる10世紀まで、
新羅(日本読み『しらぎ』・韓国読み『シーラ/シルラ』)という国があり、
慶州はその首都として繁栄しました。
ということで、現在でも慶州市内には土饅頭型の古墳が密集してあったり、
市内&郊外には仏国寺や石窟庵を始め多数の仏教施設や遺跡が点在していて、
街全体が世界文化遺産に登録されています。
時代的にも、かつての首都という雰囲気的にも、
日本の飛鳥や奈良(平城京)の街に近い感じかな。
京都(平安京)は現役都市ということもあって、ちょっと違う感じ。

ともかく、『屋根のない博物館』と呼ばれる慶州には、
韓国内はもとより、日本からも諸外国からも、大勢の観光客が訪れます。
こういう僕も5年前のGWと3ヶ月前のGWにやって来て、
5年前:タクシー貸切/3ヶ月前:レンタサイクル&バス
で市内&郊外を動き回った一人。
車窓からの眺めは、各地の記憶を鮮明に呼び戻します。ちょっと懐かしいなー。


こうしてバスは慶州市外バスターミナルへ。
乗客の多くはココ観光地・慶州で降りて行きました。
ちなみにバスターミナルと慶州駅とは2km程離れているんだけど、
市外BTと高速BTは隣接して…いたんだなぁ。知らんかった。
5年前は釜山からの往復ともに高速バス、3ヶ月前は帰路に高速バスを利用。
なので高速BTは僕にとってはお馴染みだったんだけど、そのすぐ隣に市外BTがあったなんて。
で、前回は高速バスが満席で、座席指定されたバスまで1時間半以上待合室の住人をしたんだけど、
市外バスの方は座席定員制で早い者勝ちだから、
市外BTの方に行って乗り場で並んでいたら、もう少し早いバスに乗れたのかも。
うー、なんてこったい!

慶州を出ると、バスは高速道路ではないけど、かなり立派な国道を走行。
そして約30kmを30分ちょっとで、次の経由地・浦項市外バスターミナルに到着しました。
(ちなみに市外BTは、地図で見ると高速BTと2km程、浦項駅と3km程離れているみたい。)
ここまでの距離は約110km、白岩温泉までの全行程の約半分です。

ここで僕以外の乗客が全員降り、バスには運転手と僕だけに。
運転手は僕に何か話かけたかったみたいなんだけど、残念ながら韓国語オンリーの様で…
で、ようやく、
「チケット、プリーズ。」
僕からチケットを受け取ると、運転手はボールペンで何やらチケットの裏に書き始めました。
ん?こいつはもしかすると…
「よぎ ばすたーみなる、ばす ちぇんじ?(ここのバスターミナルで乗り換え?)」
「イエス。」
あ、ここで乗り換えなんだ。
「バスを降りたら、すぐに次のバスがやって来るから、それに乗れ。」
運転手は身振り手振りで親切に教えてくれました。そこで、
「かむさはむにだ!」
一言お礼を言いってバスを降りました。

2時間弱の乗車なんで、まだまだ体力的には平気なんだけど、生理現象は別。
そこでファジャンシル(化粧室)に行って戻ってくると、言葉通り乗り場には乗り換えのバスがスタンバイ。
そしてそして、バスのフロントガラスには『ピョンヘ(平海)』の文字が。
おぉっ!、これに乗れば、ようやく平海に到着なんだー。
なんて思いつつバスに乗り込み、相も変わらず運転席の真後ろに陣地を構築します。
すると程なく乗り換えバスの運転手が乗り込んできました。

でれれーん。
ばすのうんてんしゅがあらわれた。
たびびとはにーは、
「ぴょんへろ ねりょちょせよ。(平海で降ろして下さい。)」
『ねりょ』のじゅもんをとなえた。
『ネー。』
うんてんしゅは『ねりょ』のじゅもんにかかった。

この『ねりょ』の呪文、ならぬ「~ロ ネリョチョセヨ。(~で降して下さい。)」の韓国語会話、
以前の旅のバス利用時に、バス車内で必要に迫られて急遽覚えたもの。
韓国のバスでは車内アナウンスなんて皆無だし、たまにあっても何言ってるのかよく解らないし。
なんで終点まで乗って行くんなら別だけど、
よっぽど土地勘がある区間とかでなければ、乗り越してしまう可能性大です。
僕も何度降り損ねたことか…。
市内バスだと乗り込むのも大変なんだけど、市内/市外バスでは実は降りるのも大変で…。
なのであらかじめ運転手に降りたい場所を伝えておいて、着いたら降ろしてもらうのが無難。
『ネリョ』は、韓国でバス旅やる時にはマスター必須の言葉なのです。

さて、浦項での乗り換え時間は15分程。
トイレにも売店にも慌しくもなくゆったりと寄れ、それでいて待ち時間を感じないバッチシな時間でした。
ちなみに浦項市内にも温泉が数多く点在しているらしいんだけど、日本人が訪れないんで情報皆無。
「いつかはこの街も制覇しなきゃぁなぁ…」
なんてことを考えながら、売店で購入した本日3本目の燃料(缶ビール)補給を開始していると、
バスは浦項バスターミナルからノローっと発車しました。

こうして浦項を出たバスは国道を北進していくんですが、
その国道はというと、高速道路並みに整備された部分もあれば、いかにも下道な部分もあり。
そして、道路上のバス停で小まめに客扱いをし、
また途中『盈徳(ヨンドク)』、『寧海(ヨンヘ)』、といった
日本人には殆んど馴染みのない街のバスターミナルに立ち寄ります。
なので浦項までの順調さが嘘の様に、なかなかバスのスピードが上がりません。
原住民の韓国人達にとっては、このバスは使い慣れた『足』なんでしょう。
韓国のバスの常として、車内アナウンスなど全くなかったけど、
自分の利用する停留所にバスが「スー」っと停まって扉が開くと、当たり前に降りて行きます。
そうして一時間が過ぎ、二時間が過ぎ、いつしかバスの乗客は僕一人になり…

バスは、ちゃんと平海に着くんだよね。
バスの運ちゃんは、ちゃんと平海で降ろしてくれるんだよね。
全然土地勘ない所なんで、なんか、なんか…、とっても心細いよぉー。


そんな感じで心細さが臨界点に達しようとした頃、
バスは時刻表にも載っていない、厚浦(プホ)という小さな街の小さなバスターミナルに到着。
ここで運ちゃんは後ろを振り返り、
「ピョンヘヌン タウミヨ。(平海は次だよ。)」
「えっ!たうむ?!ねくすと?!(次?!)」
「ネー!」
よかった!『ねりょ』の呪文がちゃんと効いていたみたいだ!
そしてバスが厚浦BTを出発してちょっと走ると、
案内看板に『ベガムオンチョン(白岩温泉)』の文字が見え…、
程なくしてようやく一発目の目的地、平海バス停留場(ピョンヘバスチョンニュジャン)へ到着しました。
(これ位の小さな規模だと、正式には『バスターミナル』ではなく『バス停留場』というみたい。)

「ピョンヘー。ピョンヘへトチャクイムニダー。(平海に到着でーす。)」
客は僕しかいないのに、これまでどのバス停でもアナウンスなんかしなかったのに、
運ちゃんは僕一人のために、儀式的に大声で到着のアナウンスをしてくれました。
「かむさはむにだー!(ありがとうー!)」
僕は運ちゃんにチケットを渡し、そして感謝の握手してバスから降りました。


さて、平海まで来てしまえば、白岩温泉まであとほんのチョット。
ここでは温泉行きの市内バスに乗り換えなんだけど、
でも、ま、そんなに接続はよくないだろう、と、ここで1時間位は待ちぼうけを喰らう予定(覚悟)でいました。
そしてターミナル内にはもう既に温泉行きの市内バスが停まっていたんだけど、
ただ停まっているだけだろう、どうせまだそんなにはすぐに出ないだろう、と思い、
ターミナルの写真を撮ったり、バスの写真を撮ったり。

そして写真撮影が一段落してから、ターミナル内の一つしかない切符売り場へ。
「べがむおんちょん かよ、おるん、はな。(白岩温泉まで大人一枚。)」
「1700Wイムニダ。(1700W(135円)です。)
アプロ サムプンヘ パルチャイムニダ。(あと3分で発車です。)
HURRY UP!(急いで!)」
「えっ?!3分?!はりーあっぷ?!
じゃすともーめんと!はじゃんしる かよっ!」
まさかこんなに接続いいなんて予想外。
切符を買うと手早く写真を撮り、そして慌ててトイレに駆け込み、バスにも駆け込み乗車。
それからすぐに運転手がやって来てバスは出発。
平海バスターミナル滞在はわずか10分弱でした。


例によって運転手のすぐ後ろに座った僕と、後ろの方の席に座った地元の兄ちゃんと、
たった二人だけの乗客を乗せた市内バスは、
白岩温泉まで田舎道を、のどか~に走ります。
そうしてしばらく走ると、前方に温泉街の建物群が見えてきて…

平海からは15分ほどで、
白岩温泉の、温井(オンジョン)総合バスターミナルという、
名前は立派だけど、とってもちっぽけなバスターミナルにようやく到着しました。やれやれ~。

釜山から白岩温泉まで、距離的には210~220km位かな?
だけどトータルの所要時間は、5時間10分も掛かりました。
いやー、白岩温泉は、時間的に遠かったぁー!

はにーさんの旅行記「韓国東海岸北上の旅 その2の2 白岩温泉に辿り着くまで編」でした。
続編「その2の3 白岩温泉湯巡り編」は作者執筆中です。どうぞお楽しみに!
先に帰路の「その3の1 イースタンドリーム号 東海出港編」を公開しています。(管理人)

文章・写真共にはにーさんの著作です。

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